【まちなかの散歩:124】“平静”は続くように(2018年12月)

 とうとうカレンダーが1枚になった。災害級の猛暑が続いた夏が過ぎ、短い秋を経て1年を終えようとしている。落ち着かない1年であった。6月の大きな地震、7月の暴風雨、そして再度の地震、さらに10月の台風21号。停電による生活不便・TV映像の受信不能・PCの機能不全、関空を象徴とする交通機関の不通と「計画運休」という制度の導入。さらに、執拗に身体を痛めつけた猛暑は、アウトドアを楽しむ人を減らし、蚊の活動をも鈍らせ、殺虫剤で有名な「アース」製薬は虫よけの売り上げを減少させた。丹波ツアーで訪れた綾部に本社を残す「グンゼ」も、サンダル履きで過ごす「素足派」の増加によって、女性用ストッキングの売り上げがグンと落ち込んだと報じられた。地域に傷跡を残し、老若男女と問わず、個人・企業にも大きな影響を与えた。
 天の橋立・伊根の舟宿・舞鶴引揚記念館を訪ねた春の丹後ツアー、地域住民の熱い気持ちに応えようと準備会を重ねて開催に漕ぎ着けた七夕まつり。秋の丹波ツアーでは、今年の悪天候でも頑張って実った丹波の黒豆刈りを楽しみ、綾部のグンゼ博物苑に創業者の精神を学び、福知山城で2020年のNHK大河ドラマ『麒麟が来る』の主人公・明智光秀の治世への地元の方々の高い評価を知って人物評価の難しさを考える。10月には園田学園女子大生らが加わり豊中市と豊中駅前の今昔を学び、「豊中検定」を作成、「まち歩き」で地域の課題を確認する経験を踏む。晩秋の斑鳩ツアーで世界最古の木造建造物群・法隆寺等を堪能する。
 年4回の「豊中寄席」は今や定着して会場を一杯にし、遺産相続・遺言の手続きを専門家から学ぶ「暮らしセミナー」も深刻なテーマを身近で学べる機会と期待されてきた。韓国からは2度の視察を迎え入れ、海外での評価の高さを改めて知る。「まちづくりフォーラム」も130回を数え、ホテルアイボリーのご厚意によって確保できた会場には多くの出席者が集まるが、地元の方の顔を見ることが少ないのが残念である。参加料が高いと言う向きもあるが、講師謝金・会場費・PR経費を入れれば自ずと必要経費が発生すると理解してほしい。
 3人の昔娘のスタッフがまちづくり会社を手伝ってくれる体制になったが、彼女らも役員同様に無給に甘んじてくれている。“賢者は愚者からも学び、愚者は賢者からも学ばず”と慰めてくれた友人がいたが、災害防止の都市基盤への先行投資が都市住民を守るように、教育投資は重要な人材育成であるはず。“文化都市豊中”は昔話だろうか。
 森友学園問題は政治の課題をクローズアップすると共に「豊中市」とお上に逆らってお仕置きを受けた籠池氏を有名にした。海外のトランプを巡る動き、シリアの問題、沖縄の民意と国際政治の評価を真面目に考えようにもTVのチャンネルは3S(スポーツ、スクリーン、セックス)ばかり。父の意を存分に汲まれた今上天皇の平和を希求された姿勢に思いを馳せつつ、平成最後の年末を迎えようとしている。

(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.223に掲載)


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