【フォーラム:196】建築使うて何すんの? 大道具・小道具は舞台にかける演目から:10月公演 ハイブリッドワーク(2025年10月)

第196回豊中まちづくりフォーラム

□主催:豊中まちづくり研究所
□日時:2025年10月15日(水)18時30分から
□会場:阪急豊中駅前 ホテルアイボリー
□会費:1,000円
□テーマ:建築使うて何すんの? 大道具・小道具は舞台にかける演目から:10月公演 ハイブリッドワーク
□講師:柳父行二氏((趣)セカンドカード研究処)

■講演概要

何かをするには空間が必要で、「空間を使って何をするか」が空間設計の起点になる。「どんな子供を育てるか、そのために何をするか」を丁寧に考えた中学や、医療従事者逼迫の対処で「接種可否と副反応対処要否判定の兼務」を組み入れたコロナワクチン集団接種会場案は、見慣れないレイアウトになっている。
建築の発注には、「ここで、こんなことをしたい」を「ここに、こんなモノを造ってほしい」に変換し、設計者に提示することが必要だが、固有事情を色濃く反映させた設計要件に、誰がどうやって変換するか、どこで学べばよいかが謎である。
1級建築士試験の製図では、「土地の条件と室名・規模・機能・主要な使い方」等、発注者になじみのない言語を山盛りにした要求室一覧で設計要件が提示される。題材は、保育所、児童館・子育て支援施設、集合住宅、図書館、美術館の分館、大学、(貸)事務所ビル、小規模なリゾートホテル、健康づくりのためのスポーツ施設、デイサービス付き高齢者向け集合住宅、高齢者介護施設などで、利用体験があるか、見学可能か、活用シナリオを読み解けるものが中心となっている。固有の空間活用シナリオを丁寧に読み解く必要のある新聞社や工場などは出題されてない。建築の設計教育も同様で、「ここで、こんなことをしたい」を、固有事情を色濃く反映させ、「ここに、こんなモノを造ってほしい」に変換する方法は未成熟で、発注者と設計者の歩み寄りが必要である。発注者が建築側の言葉を使うようになるのに「三軒建てれば普請道楽」といわれる歩み寄り方があるが、中学校もワクチン集団接種会場も、空間要件抽出の前提となる業務シナリオの把握が重要課題で、先立つ問題に発注側での業務の整理がある。
業務施設は事業の経営資源で、事業目的達成に貢献し、投資効果を高める設計が求められる。「何をするか」と「どんな空間が必要か」は、舞台にかける「演目」と「大道具・小道具・照明・音響など」になぞらえることができる。業務シナリオ(演目)は業務企画者が作り、業務場面ごとにFacility(舞台装置)を考え、実際に動かしてみてシナリオとFacilityを修正していく。PDCAを回すのは業務企画者の役目だが、次々に現れるFacilityとその活用法の有効性と有用性は、採用事例を多く知る設計者の方がよく分かっているはずである。必要な情報は、予告した効用が得られたか、想定外の副作用が出なかったかで、副作用を抑えるために何をしたか、修正結果は好ましいものだったかも含む。竣工で離れるとPDCA情報が得られず、キーワードを振り回すだけになりかねない。
本日の演目はハイブリッドワーク。COVID-19で広がったテレワークからの揺り戻しを副作用への対処とみなし、業務企画者によるPDCAの回し方を考えてみる。

■講師プロフィール

1977年大阪ガス入社、工場建設部門配属。LNGタンクの耐震実験、空気分離工場建設、光ディスクによるレコードマネジメント、不整形地盤の地震観測を担当後、米国でファシリティマネジメントの手ほどきを受け、重要拠点を有する業務施設の耐震改修に従事。2011年退職。
京都工芸繊維大学、大阪産業大学、福井大学、愛知淑徳大学で非常勤講師、大阪大学で連携教授。
日本建築学会建築プログラミング小委員会委員、主査を二期。小委員会活動として、動物園、博物館、就労型福祉施設の設計要件整理も分析している。

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