【まちなかの散歩:48】魔訶不思議(2012年8月)

 8月。ご先祖が帰って来られるという仏教の考え方に従い墓参を行い、祖先を改めて敬う月でもある。「魔訶」とは「偉大な」という古代インド語の「マハー」の漢字訳とか。

 その「魔訶不思議」なこと、理解し難いいくつかの例を挙げてみたい。
 その1。7月1日、関西空港と大阪(伊丹)空港が経営統合され、民間の知恵と力を使って再生を目指し、運営権の売却を全面解禁するという。そして、声高に主張されているのが伊丹廃港であり、跡地への副首都建設構想だとか。東日本大震災で、仙台空港が海から押し寄せた津波で使用不能になり、空路からの支援の手は長い間、福島・岩手花巻空港からであったことは記憶に新しい。海岸から近いと言っても松原や砂浜があり、ある程度の距離もあった仙台空港が機能不全に陥った経験を教訓にすれば、海上空港の危うさ、しかも大きな風でも通行止めになる連絡橋、不等沈下を避けるためにジャッキを使って地下の機械室で調整している関西空港に、狭い紀淡海峡を越えて大津波が襲いかかってくる時の危機管理はどうなのだろうか?このことをメディアでも指摘された例を見聞していない。

 その2。7月1日からは、電力の全量買取り制度がスタートし、ローソンや近鉄、京セラなど大手企業が相次いで参入を表明しているという。再生可能エネルギーの普及のための制度というが、電力会社の買い取り義務による負担は、電気料金に上乗せされ、企業や消費者が負担することになっているという。国策として新エネルギーへの転換を図るための誘導策だというなら、ここにこそ税金を投入すべきではないのか?
 また、30年を過ぎた原子炉を廃炉すると宣言されてから期間が延長された。他のエネルギーを使っての発電では会社の経営を圧迫するからだという。そんな経営状態の会社が、いつまで新炉を建設せずに現在の原子炉を稼働し続けることが出来るのか?こうした疑問の声を主張してくれる自治体の長もメディアも不幸にして知らない。

 その3。東日本大震災で発生した被災物(瓦礫)に対する危険を理由にして、受け入れ拒否する住民運動がある。原子力ムラの御用学者も政治家も信用できないと考えるのには理がある。だが、原発被害に怯える気持ちを和らげるために、地図で福島県、宮城県、岩手県の位置を示して原発からの距離をイメージすること、理解することはできないのだろうか? そんな報道は不幸にして知らない。

 その4。選挙の時の出口調査について誰に投票したかの質問はされ、開票までに「当確」がTVに出ることもある。だが、何を理由に候補者に投票したのかという投票の根拠を調査したことということを聞かない。“獲得票が多い”候補者が当選して「有権者が私に全面委任している」と勝ち誇るが、改めて投票の根拠を指摘するメディアを知らない。

 その5。国民生活に重要な政策を決めておいて、その後に国民に信を問うという。国会は、主権者である国民を代表して法をつくり、予算を配分するのではなかったのか? “盆と正月一緒に来たよな忙しさ”とは言うが、お盆ではなく後の“祭り”を行うのか?

 報じられる断片的な情報・知識を知りつつ、報じられない事柄に心をむけて真実を把握したいものである。ぶつ、ぶつ…。(合掌)

(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.86に掲載)


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