【まちなかの散歩:20】新学期(2010年4月)
4月8日は花祭り。潅仏会(かんぶつえ)として、この日に生まれたという釈迦の誕生を祝う仏教行事である。様々な草花で飾った花御堂を作り、誕生仏の像に柄杓で甘茶をかけて祝う。この甘茶で習字をすれば上達すると言われ、甘ったるい味とともに、お世話になったお寺の保育園の風景、そして園長先生と奥様先生が懐かしい。感謝である。
新学期が、4月というのは、世界的に見れば珍しいのだということを知ったのは、そんなに昔のことではない。日本と同じ4月なのは、インドネシア、ペルーという、極く少数であり、アメリカ、イギリス、アイルランド、サウジアラビア、カナダ、カザフスタン、中国、イタリア、スペイン、フランス、ドイツ、オランダ、エジプト、香港、台湾、トルコ、メキシコ、キューバが9月である。隣国の韓国もアフガニスタン、アルゼンチンと共に3月であり、他に1月や2月、6月・8月・10月もあるという。
外国の例を持ち出すまでもなく、TV番組「秘密のケンミンショー」では、狭い日本の各県で、これほどまでの地域個性があるのかと驚かされることが多い。各地から集まる人々の前で話す機会がある毎に、正月のお雑煮の中身を聞くことがある。彼等は異口同音に「普通です!」と答えていたが、その中身の違いに一同が驚く。
この習俗の違いは、些細なことではあり、多数派が少数派を排除することは、まずない。しかし、まちなかでの物事の決め方では、同化を強制するのではなく、反対意見を汲み取り、それを出来るだけ認めるようにつとめること、少数者による意思を尊重しつつ、それが多数決によって結果的に退けられることの痛みを多数者が「責任」として感じることが求められる。勿論、今日、問題として指摘されるような“わがまま”と見分けがつかなくなった「自由」は、社会を内部から腐敗させることになり、十分な注意が必要なことは言うまでもないが・・・。
学校へ、会社へ、地域社会への一年生諸君、“民主主義の両刃の剣”をうまく駆使できる術を磨いていきましょう。
(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.32に掲載)
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