【まちなかの散歩:118】誰のための議員か(2018年6月)
市長選挙は激戦の末に、維新と共産以外の全会派(政党)から推薦を受けた新市長が誕生した。自治体選挙とは大きな争点がなく、そんなものだと訳知り顔にいう人もあるが、同時に行われた議員補欠選挙で議席を増やした維新という反対勢力があり、政党レベルでは主張の異なる議員を味方にして政策を遂行するには、さぞ骨の折れることであろう。
ただ、「各政党が挙って同一候補を推薦した」思惑が、もしも来年の統一地方選挙を控え、選挙ポスターや選挙公報に「市長推薦」と書き、「市長と一心同体」を強調して当選を期したいというのなら、これは悲しい。国会議員を多く確保した政党が首相を選出する議院内閣制とは違い、市長は市長選挙で選び、議員は別の選挙で選ぶ2元代表制を採用する自治体の制度は、首長(市長)をチェックする役割を議会での議論を通じて議員に担わせている。その役割を担えない議員は不要と言われても仕方がない。
そんなことを考えているときに「広報とよなか」5月号が届き、「豊中市議会議員条例の一部を改正する条例(議員提出議案)」として、「議員定数を2人削減し34人に改正(次の一般選挙から施行)」が報じられている。議員は市民の代表者であるから議会を通じ、あるいは直接に行政に意見を反映してくれる政治家である。その役割を果たす職業人が減る。どういう意見が交わされ、誰がこの考え方に賛成し、どういう理由で反対したのかを知る機会を逸している。市議会中継がインターネットで見られるようになっているので、「市民としての怠慢」との指摘は甘んじて受けよう。
この議員削減が「議員提案」とされており、市長が「議員が多くて扱いに困る」あるいは「“議員報酬”(“給料”)が市の財政を圧迫するから減って欲しい」と考えたのでもないらしい。市議会議員の意見として、「働かない議員が多いから減らす」というなら制度の話ではなく、働かない政治家を選んだ市民の責任である。その間違いの“罰”として「市民は自分の利益ばかりを市役所の要求してくる議員を選ぶばかりだから、そんな質の低い議員を仲間として受け付けない」という“良識的な”議員が提案して減員になったのか?それでも、減員の影響で必ず質の低い議員が落選するとも言えない。
年間の議員に掛る経費は月額64万円弱にボーナスを加えた金額であろう。今や市民から遠い存在となった市行政を市民に結びつける議員に掛ける経費として高額だろうか?議員の意見がいつも市長と一致してしまい、チェック不要なら、市長とその直属の優秀な専門家集団である職員スタッフに市政を任せてしまえば、さらに経費は減るであろう。どこを向いての議員減員なのか、議会内輪の議論ではなく、最も影響を受ける市民の声を聞いてみるべき問題ではないか。我々も熟慮すべき問題であろう。
(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.217に掲載)
※まちなかの散歩のバックナンバーはこちらをご覧ください。