【まちなかの散歩:28】年の暮れ(2010年12月)

 師走・極月・12月。12月8日は「ニイタカヤマノボレ1208」の電報が択捉島(えとろふとう 千島列島南部)に集まっていた日本海軍の機動部隊に対して、連合艦隊の山本五十六司令長官から届き(12月2日)、ハワイの真珠湾に奇襲攻撃をした日である。「トラ、トラ、トラ」が、奇襲開始を報告した暗号であった。こうしてアメリカを第一の敵とする太平洋戦争が始まった。1941年(昭和16年)のことである。(真珠湾攻撃の1時間前には英領マレー半島に日本陸軍が上陸を開始〔マレー作戦〕。第2次世界大戦は1939年にはじまったヨーロッパ戦線に続くこの太平洋戦争をもって戦火は文字通り世界規模に拡大した。)
 最近、若者と接する機会が多くなっているが、彼等が歴史を知らないことに驚く。直近の尖閣列島問題、北方4島の問題という領土問題への関心は歴史を明確に学んだ経験のない若者には、メディアが扇情的に伝える以上の意味を知ることもなく、しょせん他人事かもしれない。隣国の愛国心教育に見習えという以前に、学校で日本史を選択しないで学校教育を終えてしまうという学生が少なくない。少子化のせいで学生に嫌われないように歴史が大学の受験科目から外されたせいか、歴史観の対立から日本史を教えることが難しいと教師が尻込みするのかも知れないが、かつてのソ連のように書記長が変われば国の歴史も変えるということもないだろうに、歴史的事実を知らないで社会人になることが恐ろしい。

「社会が今日のような状態を呈しているのは、何千年という長い人間生活の進歩変遷の結果である。現在の社会を正確に理解するためには、ただ目の前にある現在の社会を研究するだけではいけない。現在の社会がこうなるまでの長い歴史をたどってみることが、ぜひとも必要である。歴史を学ぶ必要はこうした理由に基づく。現在の社会に見いだされるあらゆる問題は、すべてそのよってきたるゆえんを過去のうちに持っている。過去にさかのぼってその由来をきわめなければ、現在の問題の理解は不可能であるし、ましてその解決の困難なのはいうまでもなかろう。社会科の学習のうちでも、歴史のそれはすべての基礎をなすものともいえる。」(新日本史三訂版・家永三郎)

 12月14日は赤穂浪士の討ち入りである。播州・浅野家に異変を起こした松の廊下での刃傷沙汰。それだけに終らなかった浪士と家族の行く末を案じることなく年号を覚えただけの歴史学習にも猛省し、年末(松)・年始の骨休めの期間を使い、受験勉強から解放されてもう一度学ぶ我が国の歴史も、旅にでる楽しみを増やすものではなかろうか(廊下)。

(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.48に掲載)


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