【まちなかの散歩:140】春 まだ見えず(2020年4月)

「春4月・・・」と明るく書き出したいのだが、この原稿を書いている今も新型肺炎感染(新型コロナウイルス感染症)の拡大が続いていて、いよいよWHOからパンデミック(世界的流行)宣言がされ先行き不透明である。目に見えない敵に怯えている国民に政府の政策判断がチグハグで対応が後手に回り、更にそれを胡麻化そうとする信頼に欠ける政権の隠蔽体質が不安に輪をかけているからである。透明性と信頼性に基づくリーダーシップ、科学的根拠に基づく政策、これらが普段から備わっていなければならないことがここにきて解る。そして現在の世界における中国の影響の大きさを思い知らされている。
 マスクや消毒液が店頭から消え、1973年(昭和48年)の石油ショック時のトイレットペーパー騒ぎと同じ現象を起こした。47年前は千里地区のスーパーから始まった「誤解」から生じた悲劇であった。豊中市は、これを苦い教訓にして市内小売業者との連携による「ロープライスセール」や消費者協会の献身的協力による「物価マップ」による価格安定事業を展開してきた歴史がある。当時の苦い経験者である高齢者の多い地区でもあの時の教訓が活かされていないのは寂しい。また、今や温水洗浄便座が各家庭に普及しており水分をふき取るだけにトイレットペーパーがどれほど要るのか?こんな時こそ冷静な頭と熱い心で陣頭に立つリーダーの市民への的確なメッセージが求められる。
 感染が伝えられ医療機関・福祉施設の「閉鎖」が始まっている。学校のみならず病院での通常の受診、福祉施設での介護なども機能停止に陥り日常生活が壊れ始めていく。この騒ぎで9年目を迎える東日本大震災の惨事・追悼・反省が霞んでしまったが、阪神淡路大震災の折、災害廃棄物(ガレキ)の処理をどの部局が担当するかが議論になり、当然のように「清掃部」に押し付けられそうになった時に「それでは、日常ごみの収集ができません」と泣きながら訴えた新任部長がいたと豊中市役所OBから聞いたエピソードを思い出した。対応は迅速に進めてもらいたいが、その際、対策がもたらすマイナス面を慎重に見極め丁寧に補うことを忘れてはならず、ましてやドサクサに紛れて、ここぞとばかり国民の基本的人権を損ねるような物騒な制度・仕組みを忍び込ませないことも肝要である。
 そこで“福祉に強い”を自認するリーダーをもつ我が市ではどう動いてくれているのか。多くの経験・知識・情報を持つ専門家の知恵を借り科学的根拠を基に透明性を持って市民を説得して信頼性を得ていかねばならないが、エイズ検査を「タダやから検査受けや」と勧めてくれた保健所が今、市民の不安を取り除くのにどんな啓発をしてくれているのか?今こそ“国に右へ倣え”という「指示待ち」でない「自治」を科学に基づき発揮して欲しい。文教都市、広報・情報政策を誇示してきた豊中市行政に率先垂範してもらいたい。大阪維新の会から何かと批判され続けている市行政・職員は、今こそ奮起して存在価値を示し、「まちづくり協議会方式」に代えて「地域内分権の日本有数モデル」として導入された“コミュニティ政策”がどう機能するのか全国に見本を示してもらいたい。
 また、これまで信頼性・透明性・科学性・国民目線を欠いてきた政権も今を乗り切らねば、今度こそ国民は目を覚ますに違いない。

(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.239に掲載)


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