【まちなかの散歩:110】消防車が交流の灯を点けた(2017年10月)

本紙9月上旬号で50回の連載を数えた「海外まち事情」では、『ラオスのボランティア救急隊と豊中消防』を掲載している。見過ごされた方のために、ここに再掲する。

「世界中には救急サービスのない国がたくさんある。ここラオスの首都ビエンチャンもそうだった。交通事故にあっても、事故現場から病院に運べない。途上国では病院に到着できず亡くなる人が多いんだ。お医者さんや医療施設が足りず、病院内だけでも大変だから、救急車まで手が回らないんだね。ラオスでも同じだった。フランス人のセバスチャンは、交通事故現場で病院に搬送できずに亡くなる若者を見て立ち上がった。自分で寄付を集めて救急車を作り、ボランティアを募って無償の救急サービスを始めたんだ。隊員たちは働き学びながら、野菜を作り家畜を育てて、無償で救急活動を行っている。この活動に感動した地元の若者が参加し、今では200人以上のボランティアチームになった。その名前はVientiane Rescue1623。彼らは川に潜っておぼれた人を救助し、火災を消火し、交通事故車を油圧ジャッキでこじ開け、命がけで救急活動をしているんだ。海外から中古の救急車や消防車も寄贈されはじめた。世界中が彼らの活動支援を始めた。現地に行くと、消防車には豊中消防と書いたヘルメットと防火服があったよ。中古の寄付を受けたそうだ。消防車には日本語とラオス語の表示。土建屋純も微力だけど彼らをサポートしている。日本では救急車をタクシー代わりに使う人もいるようだけど、命懸けで活動して下さっている人たちに、感謝の気持ちを忘れないようにいたいね。」

筆者「土建屋純」は、読者もご存知の通り世界各地で交通システムを開発普及させている事業家であり、大学でも教鞭をとる教育者・研究者であるが、「豊中駅前まちづくり会社」の役員でもある。
8月末のある日、その彼から私の携帯に電話がはいる。「突然だがお願いがある。『海外まち事情』の第50回で記事を書いたラオスのビエンチャンレスキューのリーダーのセバスチャンが、急なことだが大阪に来ることになった。そこで消防車と防火服等を提供してもらった豊中市の消防署を訪問して、彼からお礼とラオスの現状の報告をさせてやれないか。また現場で活動されている方から寄贈していただいた消防車の修理などの方法について聞きたいらしい。また、ぜひ、豊中消防の皆様にも、ラオスで活躍している消防車と防火服を来たVientiane Rescueの勇姿を紹介したい。」という。
早速に接点が取れて、セバスチャンらは、消防署を訪問し、局長室で頂いた消防車を使った活動など紹介をした後、消防車の説明や司令室の紹介をしてもらい大変喜んだという。
細やかだが、豊中市とラオスの実のある国際交流の灯が、豊中駅前まちづくり会社を介して点ったと言えようか。縁は奇しくも“火消し”の消防車だが、こうした灯が各地で点し続けられ戦火が消えていくように願ってやまない。

(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.204に掲載)


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