【まちなかの散歩:55】貧乏は辛いが、命は惜しいし、弱いもの虐めは嫌や!(2013年3月)

 年初めに我が家に投げ込まれた不動産会社のチラシに「新年度に入って・・・」という見出しがあった。勿論「年度」ではなく「年」であろうが、この3月が、その「新年度」への切り替え月である。
 入学、進級、卒業、就職、異動、転勤、退職という人生が展開され、また起業・廃業がなされる。そして地域再生への“切り替え”が、求められる東日本大震災のあの3月11日から3年目を迎える。

 仙台郊外の被災地に住む友人から年明け早々に届いたメールによれば「わが町から30分足らずの沿岸部では、常磐線の内陸部への移動に伴う土地取得や被災者の新しい居住地の都市計画とこれに伴う土地の高騰など、新しい局面(「絆」から市場原理への移行)が起きており、被災地の隣で「復興特区」を利用した企業誘致などが行われています。福島県の沿岸部の企業などは、土地高騰や新たな市場を求めて、内陸部で土地を探しているようです。」「また、線量が高い霊山神社への毎年恒例の参拝及び霊山漬の買い出しで求めた福島県~宮城県南部のお正月料理「いか人参」をご賞味ください。御存じのとおり、上記の地区は「伊達市」及び「福島市の東」に位置し、居住制限地域スレスレのところです。名物の「あんぽ柿(干柿)」用の柿も収穫したものの出荷できずに、畑に山積みに放置されていました。冬枯れの景色に柿の赤色がわびしく映ります。」とある。

 日曜朝のテレビで『美の京都遺産』という番組があり、CMに金子みすずの詩が採用されている。はじめは『すずめのかあさん』であり、“子どもが 子すずめ つかまえた。その子のかあさん わらってた。すずめのかあさん それみてた。お屋根で鳴かずに それ見てた。”というものであり、次いで『星とたんぽぽ』では、“青いお空の底ふかく、海の小石のそのように、夜がくるまで沈んでる、昼のお星は眼にみえぬ。見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。”スポンサーは大阪西区の「非破壊検査(株)」である。

 数年前に大阪大学総長時代の哲学者・鷲田清一先生が若者に送る言葉を聴く機会があった。「権力・権威はハンディを負った人にこそ行使すべきものである」と。ノーベル賞学者・山中教授が探究する最先端研究iPS細胞研究の行きつく先が難病に苦しむ方々だという東大阪出身の科学者の考え方も同様であろう。

 見えないもの、隠されているものにこそ、実は重要なものがある。改めて、惑わされない注意深さと優しさをもって新たな年度を迎えたいものである。

(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.100に掲載)


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