【まちなかの散歩:11】ベンチャー市民の戦い(2009年7月)
6月16日、豊中駅前の「刀根山道」に面して立地する摂津水都信用金庫・本町支店の駐車場と歩道に挟まれて「こもれびガーデン」が、リニューアルオープンした。摂津水都信用金庫の好意によって土地・工作物(ベンチ・鉢etc)が提供され、まちづくり推進協議会環境部会に集う住民達が、豊中市・環境ボランティア・大池小学校などの協力を得て路傍の花園を運営する運びになった。
午後1時半からの「こもれびガーデン竣工記念セレモニー」は、傍らでのFM千里の生中継を横目に、関係者ら60名余が完成なったガーデン敷地にひしめき、来賓の活動へのエールと決意表明を聞き入った後、支援者の手になる紙製の鉢植えの花を手に手に家路に、事務所にと向かった。「七夕まつり」(今年は7月12日に開催)には、いっそう趣を添えることであろう。
手元に『街が動いた・ベンチャー市民の闘い』(脇本祐一・学芸出版)という本がある。「元祖まちづくり」(名古屋・栄東)、「街を変える現代の町衆」(大阪・天神橋)、「遊びをつくる再開発」(高松・丸亀町)、「市民バンクがつくる都心居住」(長野県飯田市)、と並んで「まちづくりの3段ロケット」と題して、我が大阪府豊中駅前のまちづくりが紹介されている。日経新聞の脇本編集委員の取材による2000年7月の初版である。すこし長いが冒頭を引用する。
『”西の鎌倉”と言ったら何人もに首をかしげられた。確かに高級住宅地、文教都市などグレードの高を誇ったかつてのイメージに程遠い状況は、高架工事が終わった阪急・豊中駅前に象徴的に見て取れる。車社会の負の断面と言えばいいのか。幹線道路が何本も集中し、ひょうたんのようにくびれた駅前に車が殺到する。渋滞は茶飯事で、歩行者は車の列を縫うように先を急ぐしかない。歩きにくい街は当然、消費者に敬遠される。豊中市が4年ごとに実施している買物行動調査によると、駅前にある小売市場の老舗「新開地デパート」の利用率は7%(96年度)そこそこ。92年度の18%強から激減しており、100人のうち7人しか買物に行かないのである。小売市場に固有の問題も抱えるが、「街の構造に手を着けない限り新開地の名は消えるかも知れない」商店主の危機感は募る一方だ。』そして、『86年の駅前青年協議会に象徴される商業者によるまちづくりに始まって、次が93年のまちづくり協議会による住民としてのまちづくり。そして、三幕目が「まちづくり会社」を設立して事業を根づかせようとする事業者としてのまちづくりだ。』
”まちづくりは、「地域」をフィールドにした未知の領域への挑戦”として著者が取材を続けてくれた豊中駅前は紆余曲折を何度も重ねながら、今「新開地デパート」の建て替え工事の停滞、刀根山道の舗装工事と課題を抱えつつ、こもれびガーデンの竣工、能勢街道サインの設置と、ささやかながらも新しい動きもあり、我が「まちづくり会社」は、月2回1万部発行の「まちづくりニュース」、月1回の「アイボリーフォーラム」、3箇月に1回の「アイボリー寄席」を継続し、今更ながらも、まち中でのネットワークづくり、人のつながりの再構築に改めて挑戦している。
まちづくりには、多くの合意を要する。合意形成の場が待っていて用意されるわけでもない。「一歩踏み出す」時の何かに役に立てればと願って、現在ささやかな活動中である。
(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.15に掲載)
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