【まちなかの散歩:97】身近な安全・安心のまちづくりを(2016年9月)

「まるであなたの気性のようね」と妻が冷やかすほど激変し、厳しさが続くここ数年の日本の気象現象。あの心身が休まる穏やかな四季の季節感は今いずこ?エアコン無き昼間の暑さも夕立で一日を終えたのが“日本の夏”であり、キンチョウの夏も夕涼みの床几で活躍すれば済んでいた。
 今夏も日本中で、さんざんに老躯を痛みつける異常な猛暑日が続き、照りつける太陽に抗うかのように道路のアスファルトの熱も這い上がってくる。まさか原発再稼働の国策に向けての世論形成に一役買おうという魂胆でもあるまいに・・・。啄木並みに、屋内で“じっとしている”とは言え、いくらなんでも我が豊中市の気温が日本で2番目に高いとテレビニュースに出るほどは高くないはずだ。大阪国際空港(伊丹)の滑走路近くの温度計が示すのが豊中市の気温というのは腑に落ちない。東北の友人に「大変な暑さですね」と慰められ、「そんな暑いところに住めるかい」と京都の友人が茶化す。「お前には言われたくないわい」と返しつつもマスコミの伝播力にはかなわない。時系列での記録が要るとはいえ豊中市も立派な観測機能を持っているはずで、地域力を高める政策の一環として生活環境評価を高める工夫も欲しい。
 そして9月は台風月である。阪神大震災以後も頻発する地震対策に集中するあまり、昭和42年7月の集中豪雨は豊中地区とりわけ千里川沿いに大きな被害をもたらしたことが記憶から消えている。台風上陸いまだゼロとはいえ、今後も同様の傾向が続くとは限らない。地震の後に起こった津波が原発事故を筆頭に東北地方の大きな被害を起こして今も収束していない。
 市民が自分の生活を安全・安心にしておくために何をすればいいのだろうか。地震にあっても3日間持ち堪えれば救いの手が伸べられると言い、日常生活でも市民の意見を反映するというけれど、どこの誰に言えばいいのか、どんな仕組みがあるのか。「豊中祭りの事務局はここですか」とまちづくり会社で尋ねた市民があったという。市役所の仕事、議員の役割、災害時の対応、等々の「社会のしくみ」がもっと分かりやすく伝えられねばならない。更に、その仕組みを絶えず使い勝手の良いように手入れしておく必要である。そのためには地域住民が当事者意識を持つことは当然であるが、面倒でも非常時・災害時を問わず、市民力・地域力を促すまちづくりに行政のもっと積極的な取り組みを期待したい。
「KEEP LEFT 自転車は車道の左を」はどう徹底されているのか。今のままでは乱暴な車が危険だから“自転車は歩道を走らない”という“法”は守らなくても良い、歩道を歩く老人・子どもを犠牲にしてでもたかが知れている、という風潮を助長するだけである。それぞれが夫々の役割を果たさなければ危機への対応が手遅れになる。身近な安全と安心のまちづくり、災害に強い自立できる地域社会の再構築を市民・行政が一体になって進めたい。かつての台風にはアメリカ女性の名前が付せられていた。暴妻ならぬ9月1日は防災の日である。

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(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.180に掲載)


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