【豊中駅前の歴史:60】「戦争を振り返る-2」(2014年10月)
「豊陵資料室」
豊中高校にある旧制中学校時代からの資料を展示する「豊陵資料室」を訪ねました。同窓会の「豊陵会」が創立80周年を記念して開設されたものです。管理をされている浅井由彦先生の案内で、数多くの資料やパネル写真などを見せて頂きました。特に目を引いたのは戦時中の資料です。浅井先生は戦前・戦中における教育史の一環として、“「豊陵資料室」を通じて学ぶ学校史”を生徒に年に一度授業されています。以前作成した参考資料には「戦前の歪な軍国主義時代を送った当時の生徒の行為と心情に触れ、教育の基本方針が青少年の成長にどのような影響を与えたかを考え、次の時代の新しい豊中の教育の在り方を共に学び検討したい」とあり、資料室に保管されている多数のパネル写真から13枚が載っています。
銃器庫:「大正12年第4師団より銃器払い下げ、後の銃器庫」。連合野外演習・軍事訓練:「総力戦に応ずる軍事力形成の一環としての青少年の軍事教育の実現、軍部による軍国主義への国民の統合」。豊中稲荷神社の前を頭に戦闘帽、足にゲートルを巻き駆け足する生徒達。現役の陸軍将校を先頭に生徒達が校門の前で木製の模擬銃器を担ぎ行進する姿。日頃の軍事教練の成果を披露するための体育大会。軍国主義的精神教育のための学校行事の一環として、中学校道(現:豊高道)を補修作業をする生徒達。その中には、昭和20年6月7日の空襲で壊滅した新免村(現:本町3丁目付近)の家屋や桜塚国民学校(現:桜塚小学校)の写真もあります。
「69年前に日本に戦争があり、どこと戦ったかすら知らない若者が少なくないとテレビで知り愕然となる。」と、まちづくりニュース9月上旬号「記念日を考える」でコラム氏が嘆くように、また太平洋戦争に突き進む戦前の状況に酷似しているとの警告を発する識者も多いこの時代。「豊陵資料室」は悲惨な戦争の記憶を風化させない、まちの「戦争の語り部」だと思いました。
同号に掲載された「じゃすとナウ:“豊中駅前観光ツアー”」の報告にも、「豊中高校の資料室が良かった」との感想もあります。浅井先生は「昭和史や教育史、郷土史としても学べるので、多くの人に見てもらいたい」と仰っていました。一般の見学もできます。問い合わせは豊陵会事務局(06-6849-4973)です。是非一度見学されることをお勧めします。
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