【豊中駅前の歴史:19】法雲寺とその周辺(2010年10月)

このシリーズは、豊中駅前がどのように形成され、変遷を重ねてきたかを振り返り、これからのまちづくりに活かしたいと考え企画しました。
今回は法雲寺前住職の辻本さんにお話を伺いました。

——先日(9月25日)、「今一度、わがまち再発見 わがまちってどんなまち?」(まちづくり協議会主催)に参加しまして、法雲寺さんの辺りから千里川までを「まち歩き」しました。先ずあの立派な山門についてお聞きしたいのですが。
【辻本氏】山門は江戸時代の終わりか明治の始め頃に建ったと聞いています。私が小さい頃は釣鐘が付いていましたが、戦時中に供出され、今はありません。戦争の頃はまだ幼かったので、余り記憶はありませんが、自治会長の辻本さんが以前、このシリーズで語られた豊中空襲の時は、寺の境内に沢山の遺体が運び込まれ、遺族の方々が泣きながら遺髪をとられていた光景だけは、いまでもはっきりと憶えていますね。あの山門はその昔は「太鼓堂」と呼ばれ、釣鐘ではなく大きな太鼓が付いていたと聞いています。お寺の様々な催事に使われていたそうです。お寺自体は約400年前に建てられたと聞いております。
——本町3丁目にはお寺が3つもありますね。
【辻本氏】光源寺さんと私共のお寺は「お西さん」、看景寺さんは「お東さん」ですが、みんな浄土真宗ですね。農村だったからでしょうね。明治の頃までは、「南唱寺」(名前も字も正確かどうか分かりませんが)というこれも浄土真宗のお寺があったと聞いています。看景寺さんから稲荷神社へ行く道の途中にジャズライブのお店がありますが、その辺りにあったと聞いています。
——お寺の裏にスポーツ公園がありますね。
【辻本氏】子供が好きで、何か自由に遊べる場所が有ればとの想いから、昭和56年に造りました。長い間借家にしていましたが、住人の方にお願いして転居していただき、現在バスケット専用の公園として地域の方々に無料開放しています。ボールを叩く音など近隣の方にはご迷惑をお掛けしていますが、皆さんのご理解に感謝しております。小さい子供から中・高生たちまで入り混じって遊んでいます。大きい子は小さい子を教えながら一緒に励んでいる姿を見るのは大変うれしい気がします。
——スポーツ公園から千里川までの辺りと、法雲寺さんから看景寺さんまでの辺りとは、まちの雰囲気が違いますね。
【辻本氏】法雲寺の裏から千里川までは、昔は畑や雑木林だったと思います。昭和の始め頃に、ぼつぼつ住宅が建って行ったのだと思います。みんな大きなお屋敷で、スポーツ公園の前から千里川の土手までが敷地でした。今は建て替わっていますが。
——法雲寺さんの前の道から箕面街道へ行く道に寂れた神社のようなところがありますね。
【辻本氏】通称「へび神社」と呼ばれている所ですね。入り口に小西何某の石碑が両側に建っていますね。聞いたところによると、「小西儀助商店」の家族ではないかということです。きっとこの方々の信仰があって建てられたのだと思います。因みに「小西儀助商店」は元は道修町の製薬会社で今は接着剤「ボンド」で有名な「コニシ」の前身です。
——このシリーズで阪急電車の開通に伴い豊中駅が出来たことが、豊中の住宅開発を促したと知りましたが、各分野の錚々(そうそう)たる方々が移り住んで来られた事に感心します。
【辻本氏】そんな人達も、代々住んでいる私たちも、日々の買い物は駅前でした。私が小学生の頃は銀座通りに牛が歩いていました。農作業のために使われていたのでしょう。電信柱に繋いであったのも良く見かけました。こんな話で恐縮ですが、昔の便所は汲み取りでしたね。各家々を回って、杓ですくって桶に入れ、天秤棒を担いで荷車に移して集めていました。その荷車を引くのは牛です。それを畑の肥えタンゴに入れよく寝かして肥料として使っていました。馬もいましたね。乗馬倶楽部の馬だと思います。触らせてもらって楽しかった思い出があります。その頃はスーパーなど無く、それぞれのお店で話をしながら買い物が出来たのどかな時代でした。
——今日は有り難うございました。

(辻本純孝氏プロフィール: 昭和16年生まれ 法雲寺前住職)

〈お詫びと訂正〉記事中のヘビ神社のくだり『通称「へび神社」と呼ばれている所ですね。入り口に小西何某の石碑が両側に建っていますね。聞いたところによると、「小西儀助商店」の家族ではないかということです。』について、次回(20回)の津浦さんへの取材で、石碑には「小西鹿三郎」の名が刻まれており、ヘビ神社の辺りに長くお住まいの方であることが判りました。お話をお伺いしました辻本様からはこのお話の真偽は定かではないとお聞きしたにも拘らず、誤解を招く記事を載せました事を、辻本様をはじめ読者のみなさまには、心からお詫びいたします。


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