【まちなかの散歩:43】水鳥の足に暇なき我が思いかな(2012年3月)

 3月。このコラムが目に留まる頃、メディアの特集とも相まって、多くの方が1年前の東日本大震災をそれぞれの体験とともに思い起こし、春遅い東北の被災者の身に思いを馳せておられることであろう。まだまだ寒い北国の生活は、依然不透明な行き末と同じく厳しいものに違いない。

 とはいえ、春3月である。秋に入学期を変えるという大学の動きもあるが、現時点の日本では、どの地においても等しく卒業・入学を待つ子がいて親がいる。思い起こせば、もう半世紀も前のことだが、雪残る日本海の田舎を離れ、都会の大学の寮に入る際、母が荷物に忍ばせた歌を思い出す。“ただ見れば何の苦もなき水鳥の足に暇なき我が思いかな”。確かにプールの中で床の目地を見ながら泳ぐと水面上では分かりにくい己の実際の速度がよく分かる。これだけ繰り返し、これでもかと消耗品のようにメディアで流される特定のニュースの扱いには、うんざりし、刺激のないことには興味を持たなくなってしまい、段々と話題がエスカレートしないと関心がもてなくなっている。だからこそ、自分の現在位置や進路をしっかり確認して、世の中の動きを見つめたい。

 妖艶のエコノミスト・浜矩子氏の講演録がある。彼女は次のように述べる。現下の大震災、デフレ、円高、赤字・・・と「“もう駄目だ”感」が拡大している日本の状況で活路を拓くのは“市民の活動の場”である地域共同体、地域社会、地域経済という「市民の力」である。中東や北アフリカを通じて市民達が蜂起した「グローバル市民主義」の担い手こそが世の中を変えた。「グローバル主義の担い手」とは、かつての「スーパーヒーロー」の代表選手「スーパーマン」からは遠く離れた「ドン・キホーテ」を今の時代は求めており、必要なのは筋力や腕力ではなく若さでもない。①「清い心」②高齢で世間知らずのため、“人々の善意と愛情に支えられながら”世のため人のために働くので「他人依存度が高く」“共に生きていくということの重み、大切さ”が解っていて、③「腕力が弱い」という三拍子揃ったグローバル市民達が手をつなげれば、国々の愛国主義が衝突する非常に恐ろしい状況が出現してしまっても、まともな方向に筋道をつけられるという。

 春の花・菜の花は、一面に黄色く咲いた花も綺麗だが、昔から菜種油に期待が集まる。まちづくり活動も対外的なアピールだけでなく、着実な地域への根付きが大切である。
 2012年5月22日に開業する東京スカイツリーは、確かデジタル放送のための建設と言ってはなかったか?「地デジ」は昨年の夏に既に放送が始まっている。何が真実なのか?
 この「まちづくりニュース」も多くの協賛広告を頂き、地域の方からも期待されて地域活動の報告や地域寄席や講演会のPRを行い、地道ながら着実に歩ませて頂いている。
 こんな時にこそ、惑わされず落ち着いて考え、真面目に地域の情報を提供していきたい。

(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.76に掲載)


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