【まちなかの散歩:75】秋の酒席で(2014年11月)
秋も深まり、日本酒が一段と美味くなってきた。社会人一年生になった時の「酒席では難しい話を話題にするな」との先輩の教えに背いて、過日も酒席で議論をしてしまった。テーマは「今、町なかに商店街は要るか」である。
かつて、豊中のような住宅地で大阪市内に勤める市民は「定時制市民」と呼ばれ、昼間は商業者に「まちの管理」を任せていると言われた。今で言う「タウンマネジメント」を地域の商業者が担うことが期待されていたのである。「まちづくりに汗を流して取り組んでいる商店街を素晴らしいというならば、スーパーよりも商品が高くても2倍も3倍もするわけがないのだから、そこで買うということが最大の応援ではないか?それをしないで口先だけで、頑張れと言っても活動は持続できないよ」と、その頃は素面で議論したものである。
時が移り、今では、サラリーマン生活に定年退職をした人々や子育てを卒業して“やんちゃな連れ合い”からも解放された熟女達が町には溢れ、ボランティアでの活動が、まちを仕切っている。
10月8日付けの毎日新聞『水説』から懐かしい書名を思い出し本棚から取り出す。『地域再生の経済学』(88頁)の事例で「スエーデンのストックホルムから100キロほど離れた小さな町にある職業安定所を訪ねたことがある田舎町で、町の住民たちは皆、田舎だから物価が高いとこぼしていた。ここからストックホルムは、そんなに遠くないのだから、どうしてストックホルムに買い物に行かないのかと訊くと、そんなことをしたら地元の商店街が潰れてしまう。商店街が消えては困るのは町の住人で、なかでも車に乗れない子供やお年寄りだ、だから少々高くても日用品は地元の店で買う、と住人たちはいうのである。地域共同体が生きていれば、町は空洞化することはない。」と。
さて、そうなれば商業者は店前を通る通勤・通学者や通院・痛飲の人々に挨拶をし、まちへの関心をもって行動するのだろうか?どうぞ、どうぞと“盥の水”(本紙2012年6月号)を手で押し返してくれるだろうか? それともなお、自店で買い物をしてくれた客だけに愛想を振りまくのだろうか?”
民の力が蓄積されたといっても行政の力が重要なのは、これまた別である。とはいえ、「地方創生」の新政策で国の高級官僚を地方に派遣すると言う。それで苦悩する東北の窮状が救えるというのか?
国との強い主従関係を築いた市町村(“自治”体)だけに我々が納めた都会の税金を使って美味しい汁を吸わせるというのか。その発想を変えることこそ、町を真剣に愛する人材を育て、地方に“自律した活力”をつけさせるのではないか。毎朝、横断歩道で交通整理をしてくれる“緑のおばさん”に「お早うございます。いつもありがとう」の声を掛ける姿を大人が子供達に示し、模範を見せることにこそ、地道で着実な“地域に力をつけさせる”ことになるのではないか。
いやはや、やはり酒席で話題にすべき内容ではなかったかも知れない。反省。
(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.139に掲載)
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