【まちなかの散歩:39】モズが枯れ木で(2011年11月)
11月。あの厳しかった酷暑が嘘のように一気に秋が来て、今、既に晩秋である。ミカン、柿、栗で味わう味覚(み・か・く)の秋から鍋料理の季節を迎える。
我がまちづくり会社も、今年も10月18日、丹波ツアーを開催した。恒例の「自然農法実践会」の有機栽培の黒豆刈りと丹波薬草草樹公園を尋ね、薬膳料理を楽しみ公園内の薬草や草樹の鑑賞や薬草の湯に浸かり、帰路に紅葉の美しい渓谷・川代公園に立ち寄り清流のせせらぎを楽しんできた。
山々に囲まれた丹波の里の刈り取った田に立つ柿の枯れ木には、熟した実が残されていた。冬支度までの鳥達へのお裾分けに残しておくのだと大人達から聞かされていた。とはいえ、この風景を見ると幼い頃に聞いた悲しい歌詞とメロディを思い出す。
♪ モズが枯れ木で鳴いている オイラは藁を叩いてる
わたびき車はおばあさん コットン水車も回ってる
みんな去年と同じだよ けれども足んねぇものがある
アンサの薪割る音が無え バッサリ薪割る音が無え
アンサは満州へ行っただよ 鉄砲が涙で光ってただ
モズよ 寒いと鳴くがよい アンサはもっと寒いだろ ♪
(サトウ ハチロー 作詞/徳富 しげる 作曲)
ある戦場カメラマンが語っている。「いくつもの戦場を見てきたが、東日本被災地での惨状は、それらをはるかに超えている」と。これから厳しい東北の冬が来る。
先住民・アメリカインディアンは、「新大陸」の「開拓者」達によって部族の対立につけ込まれ、仲間同士の戦闘・殺虐を繰り返させられた挙句、彼等に土地を奪われていったという。悲しい「アメリカの歴史」である。
スローガンだけは勇ましい「頑張ろう ニッポン」だが、国も地方も内向きの指導者を頂いて、何処を目指しているのだろうか? 百舌(モズ)も舌鋒こそ穏やかにではあるが警告しているのではないか。節電対策ではない別の意味の「エネルギー政策」として、国民・市民のエネルギーをどこに向かって集中させようとしているのか、それとも重要な問題点から目をそらせるために意識的に分散させようとしているのか。
メザシを食いながら数々の改革を進めていった土光敏夫氏を書いた本に『鯛は頭から腐る』があるが、メザシも頭だけが腐るわけではない。頭が腐れば胴体も腐るのは勿論、頭が腐る状態にしてしまっている状態も問題なのだ。他人事ではない。支援を求める人への連帯をメザシ鯛。
(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.69に掲載)
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