【まちなかの散歩:70】ライフ創業店(2014年6月)

 先月の本紙「まちづくりニュース」中旬号では、“豊高道”について触れた。同じく55号(2011年4月号)では、「豊高の前身・大阪府立第13中学校は、大正11年10月2日から豊中の地で2学期を開始し、多くの生徒が豊中駅から学校への1.3kmの大きな10間道路を息を弾ませて急いでいる。その中には、「都市と住まい」(=まちづくり)を研究し、「住宅問題」研究の基礎を築いて数々の弟子を世に送られた故西山夘三京大名誉教授がおられる。(『大正の中学生~回想・大阪府立第13中学校の日々』西山夘三/筑摩書房)」と書いた。
 今号では、その豊高道を登りきった所にある「ライフ1号店」について紹介したい。 
「清水実業が大阪市の北郊外、豊中市本町5丁目の高台に、鉄筋コンクリート2階建てのモダンなスーパーマーケットを開設したのは昭和36年11月のことである。ローコスト、ハイパフォーマンスと、今風に言えば聞こえはよいが、その頃の、特に関西のスーパーマーケットの多くは、主婦の店グループの出店に象徴されるように、既存の木造店舗を改造しゴンドラも粗雑な木製棚を使用するなかで、清水実業のスーパー「ライフ1号店」は、舗装されたバス道を隔てた池やそのほとりの雑木林、さらには近くの稲荷神社を借景としながら、ストアコンセプトに則ったモダンなファサードと2階にしゃれたレストランを配置していた。どちらかというと東京タイプの典型的な住宅地店舗であった。(中略)果実、野菜の鮮度、商品の関連陳列については、宝塚と大阪の中間に位置してインテリジェンスの高い住民の購買心理にフィットしたストアオペレーションであった。2号店は、それから3年4カ月後の昭和40年3月に先発の阪急系ユニオンのほか地元資本によるスーパーが競合する同市中桜塚2丁目に開設した。」(『証言 戦後商業史』奥住正道 日本経済新聞社)
 そして、今や、ダイエーから離れている「ローソン1号店」も1975年6月に豊中市南桜塚で誕生しており、豊中地区の「コープこうべ」も遡れば北大阪生協、更には1950年の豊中睦会に辿り着く。ローソン1号店や北大阪生協の出現には、地元商業者との対立で行政・商工会議所を巻き込んでの起きた激しい反対運動を思い出す人も少なくないはずである。

 しかし今、逆に豊中駅前でのマンション建設ラッシュの中で、商業施設が競合店との争いでなく、どんどんと消滅している。マンションに入居する新住民が梅田で買い物をするだけでは事足りないだろうし、長年住み慣れてきた住民にとってだけでなく、商業者にとっても集積の利益としての商店街が消え、代替の商業施設も出てこなくなっている豊中駅前は、今や市民にとっても魅力ある場所と言えるのであろうか。「まちに住む人、商売や事業をする人、まちを舞台に活動する人」が、知恵を出し合い、力を合わせて生活環境を確保しておきたいものである。そんな理念を掲げて「まちづくり推進協議会」の活動が、先月の総会を終えて再出発する。
 “ナスがママ、キュウリがパパでは、嫌ダディ” まず自分事として考えたいものである。

(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.129に掲載)


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