【まちなかの散歩:71】刺抜き地蔵(2014年7月)
過日、久々に江戸の空気を吸う機会があり、何故か気になる“おばぁちゃんの原宿”巣鴨の「刺抜き地蔵」も訪ねてみた。駅前のかなり広い道を隔てて遠い向うに大きな『巣鴨商店街』の横断看板(?)。位置は分ったが近づいても平面で道路が横断出来ず、止むを得ず長い陸橋の階段を登る。これでは年嵩の人は、“棘を抜くより先に息が切れて膝が抜け”てしまいそうだ。店先には成程という品々が並べられてはいたが、映像で見る人の流れはなかった。縁日ではなかったせいなのか。“自慢です 友の多さと金のなさ”の商店街の入選川柳を見てやっと笑う。
そんな心境を味わうこともない幼な子達が豊中・稲荷山公園で遊ぶ。電車内でのエチケットさえ、わきまえなかった娘が母となると、我が子を連れての“公園デビュー”で必死に先輩ママに愛嬌を振りまく。だが、そんな交流が地域の交流の輪を広め深めていく。連携と役割分担を期待する。。
34回目を迎える豊中駅前の七夕祭りが今年も7月13日(日)に午後1時から開催される。本紙2面にもポスターを先月に引き続いて掲載している。この催しも駅前の商店街の活動や豊中駅前まちづくり協議会のしくみが生き残り、我が「まちづくり会社」が維持しているからこそ続いていると思う。
町なかのしくみは多くの場合、公害反対運動で成果を収めるか敗北してしまうか、あるいは、再開発・区画整理などで街の形が変わると、そのしくみが無くなってしまうことが多いが、「豊中駅前まちづくり協議会」は、「まちづくり“推進”協議会」と改称してからも細々ながらも継続し“まちの手入れ”を続けている。先日、豊中駅の壁に「まち歩きマップ」を設置したことをきっかけに、「豊中駅前観光ツアー」が急遽企画されたにもかかわらず、新しい住民を含む20人余の参加者を得た。
かつて“豊中市には行政が住民の市民活動を支援するしくみがある”ことで有名であった。最近、「地区まちづくり条例」に基づく地域内分権制度のモデルとなっている新千里東町から、こんなSOSが届いた。「近隣センターの建替え計画で地権者と市だけが打ちあわせて計画がすすめられており、住民が地権者と一緒に議論する場をつくって欲しいと依頼したところ、そんなことをする必要はないという。困り果てて、地域内分権やコミュニティ政策を推進する担当課に行ったところ、千里担当課と一緒になって、行政の事業推進のため千里担当課の正当性を主張したというのです。あのコミュニティ制度は言葉の遊びです。」と。
刺抜き地蔵の精神を活かすなら、もっと高齢者に相応しい巣鴨のまちづくりを徹底してめざすべきであろうし、手間と時間をかけて築き上げた実践例であり、地域内分権制度の数少ない“住民参加のモデル”としてきた千里での出来事は矛盾していないか。これが市民の審判を経ずして進める行政のせいであればなお悲しい。動かぬ、動かさぬ仕組み=棘は、どうすれば抜けるのだろうか?嘘はどうして見抜けるのだろうか? “情報なくして参加なし”。分らぬところで、国も都市も流されている。
(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.131に掲載)
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