【フォーラム:82】世界的高名な建築家による公共空間の破壊を検証する(2014年12月)

第82回豊中まちづくりフォーラム

□日時:2014年12月2日(火)18時30分から
□会場:北おおさか信用金庫本町支店 セミナー室
□テーマ:世界的高名な建築家による公共空間の破壊を検証する
□講師:吉村元男氏(地球ネットワーク会議代表 元鳥取環境大学教授)

■講演概要

世界的有名建築家が都市計画に身を染める時、建築家の優れた芸術性の創作精神・原点を逸脱して、権力機構にすり寄る巨大な空間尺度を都市に強要し、往々にして反市民、反自然、文化破壊に向かう。ル・コルビジェのパリ再開発「ヴォワザン計画」、丹下健三の「東京計画1960」はバリと東京湾の自然と風景と歴史の文脈を破壊する案である。両案は、企画段階で実現しなかったことは幸いだった。
今、大阪都心のJR操車場であった空地は、経済発展を掲げる大阪市の主導によって、企業応募の事業コンペ(春査委員長:安藤忠雄氏)の対象とされ、超高層建築群によって埋められようとしている。市民は散策と休息の場が奪われ、都心は災害時の安心・安全の広域避難場所がなくなる危険に瀕している。東京でも、2020年オリンピック開催に向けて、国立競技場の改修コンペ(審査委員長:安藤忠雄氏)が実施され、巨大な建築物が選ばれた。神宮の長年愛されてきた風景が大きく破壊されようとしている。大阪・東京の両事案は、まさに破壊寸前の状況だ。
一方、公共破壊が進行してしまった事件がおこった。大阪市特別顧問・安藤忠雄氏は、うめきたII期の西に隣接する新梅田シティの公共庭園(空地)に、巨大な緑化壁を、水辺の散策と休息のために設けられていたベンチ、街路樹を取り除き、緑地帯を破壊して設け、その壁に「希望」という名前を付け、「これで大阪は元気になり、美しくなる」という心地の良いメッセージを掲げた。これは安藤氏の大衆への政治メッセージ「でたらめで滑稽な大公布」(ビッグイッシュウー=大口叩き)であり、公開空地を破壊しても許されるという新手の公開空地破壊現象である。
公共が公共を破壊する新手の巧妙な仕掛けを検証し、まともな都市設計“まちづくりの在り方”を皆様と一緒に考えたいと思う。