【まちなかの散歩:77】初心(2015年1月)

 明けましておめでとうございます。昨年1年間も何かとお世話になりました。今年も豊中駅前まちづくり会社に変わらぬご支援をよろしくお願い申し上げます。
 2015年を迎えた。「2000年問題」で大騒ぎしてから15年も経つことになる。そして、(近頃はあまり流行らないが)干支で言えば「羊の年」である。その羊の群れをモンゴルの首都ウランバートルから400kmも離れた広い草原で馬に乗って追っていた少年が、大相撲の力士をめざして遠く大陸を越え海を渡ってきた。今から僅か6年前の2010年の相撲留学である。そして2014年には大相撲の初土俵を踏むことになる。史上初となる髷も結えない新入幕力士が横綱と二人の大関を倒して勝ち得た11月・福岡場所での関脇の地位。それでも勝ち越しを果たした逸ノ城である。
 その逸ノ城が今も勝てない横綱・白鵬は、優勝回数で大横綱・大鵬と並んだが、振る舞いが悪いとすこぶる評判が良くない。かつて69連勝を目指していた頃は、その成績をもつ双葉山を模範的な大横綱として褒め称え、目標であると公言していたが、それが達成できなくなると『未だ木鶏足りえず』とも語らずにさっさと双葉山のことを口にしなくなる。今や大鵬に近づき追い越そうとしているが、双葉山や大鵬に、その人格面では未だ未だ及ばないとの厳しい評価が強くなって来ている。かなり以前からの横綱らしからぬ立会いの張り手、土俵を割ってしまっている相手力士(客席にまで飛び込んだ力士にも)をなお押し倒す、懸賞金を奪うかのように受け取る、優勝の際に口を摘むんで国歌を歌わなくなった・・・等々。かつて悪者力士として半ば角界から追放されるように去って行った朝青龍の仕草に似て来た。
 同じ蒙古民族ではあるが、中国領となっている内モンゴル出身の力士に蒼国来がいる。不幸な出来事があって挫折寸前まで行っても見事にカムバックしてきた好青年である。これから1月の東京・両国国技館での正月場所を終えると、巡業を経て3月・大阪場所となり、蒼国来は荒汐部屋の力士として、久々に豊中稲荷神社の境内の奥で朝稽古に励むことになる。彼も良き助言者があれば、異国の地で「李下に冠を正す」こともなかったろうに、回り道をさせてしまって残念でならない。
 プロの勝負であるから、勝つことが至上命令であろうし、勝てば官軍でもあろうが、それだけではいかにも物足りないし、人間としての道を外して我々素人の憧れとしての輝かしさを失ってもらっては寂しい限りである。心から本人の成長を願う良い助言者があり、初心を忘れず、その言を素直に受け入れる気持ちで努力すれば、更なる大輪の花を咲かせるだろう。大いに期待したい。
 相撲の世界に限らない。選挙に勝てば全て自分(達)の主張が認められていて、好きなように出来ると言い放つ政治家も同様である。慌しい暮れの衆議院選挙が終わって今年の国政が始まる。そして春には、統一地方選挙・自治体の選挙が始まる。改めて、それぞれの政治家が、初心を忘れず我々市民に向っての政治を行ったか、行うのかを点検し見極める数少ない機会である。
賢明な市民は判断を間違わないだろうが、豊中稲荷神社の境内にある聖地遥拝所から拝む天照大神・神武天皇・明治天皇も、私達がどう政治家を選ぶのか、そして、その選ばれた政治家がどのように手腕を発揮するのかをじっと見守っておられると思う。心したいものである。

(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.143に掲載)


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