【敬天塾:157】社会科学で読み解く「集団的アイドル」」完結編:異端の「集団的アイドル」欅坂46の支持層から垣間見える若者の「疎外」(2021年12月)

第157回敬天塾

□主催:豊中まちづくり研究所
□日時:2021年12月21日(火)18時30分から
□会場:阪急豊中駅前 ホテルアイボリー 3階 オーキッドホール
□会費:1,000円
□テーマ:「社会科学で読み解く「集団的アイドル」」完結編:異端の「集団的アイドル」欅坂46の支持層から垣間見える若者の「疎外」
□講師:正井昭夫氏(豊中まちづくり研究所主任研究員)

■講演概要

前回の「社会科学で読み解く「集団的アイドル」」の報告において、集団的アイドルを支持する「固い層」として、「オタク」の存在を指摘しました。「オタク」は、1980年頃から現れた、都市郊外に住む新中間層(中流家庭)の引きこもりがちな子弟の一群で、濃密な人間関係は苦手だが、比較的豊かな生活環境の中でマニアックな趣味に熱中する傾向がありました。この「オタク」層が、いわば疑似恋愛の対象として熱狂的に支持することにより成立したのが「集団的アイドル」だったというのが私の仮説です。
「オタク」は、当初、クラスの極少数の変り者でしたが、SFやアニメブームを追い風に急速に拡大し、遂には海外においてまでも市民権を獲得するようになりました。しかし、その過程で、当然のことながら多様化と分岐が起こり、女子の「オタク」(=「腐女子」)まで生み出したのです。しかし、バブル崩壊後、市場原理至上の新自由主義が席巻する中、新中間層が「勝ち組」と「負け組」に分解、「オタク」の物質的基盤が崩壊して変質を余儀なくされました。今日、「集団的アイドル」の頂点に君臨する乃木坂46は、メンバー人ひとりは様々な今日的葛藤(いじめ、不登校、家庭内暴力など)を引き摺りながらも、「清楚」「憧れの存在」を演じることにより、多様化し分極化した「オタク」層を幅広く獲得することに成功したものです。
では、乃木坂46の姉妹グループである欅坂46(現櫻坂46)は、どうやって支持を得て来たのでしょか?欅坂46は、乃木坂46とは異なるカラーとする必要(商品の差別化)があったため、「清楚」より「カッコいい」イメージを狙っていたようですが、提供する楽曲は、反抗的なメッセージ性が強く、表現する世界観もどこか諦めたような翳りがあり、必ずしも、伝統的意味での「オタク」の求める「集団的アイドル」像とは相いれないものでした。それが、伝統的な意味での「オタク」層を越えて、大人たちからさえも大きな支持を得たのです。
なぜ、「集団的アイドル」らしからぬアイドル、欅坂46は成功したのでしょうか? この問題を分析する中で、私は、社会科学を学んだわれわれの世代にとっては馴染みの深い「疎外」という概念に辿り着きました。
前回の報告は、会場の都合で後半端折らざるを得ず中途半端な報告になりましたが、今回の「完結編」は、2000年以降急激に広がったと思われる、若い世代が抱える根深い「疎外」感こそが、欅坂46への熱狂的支持に繋がったことを明らかにするとともに、それゆえに、絶対センターの平手友梨奈はグループを脱退し、欅坂46自体も櫻坂46に改名せざるをなかった過程を詳らかにします。なお、質疑応答では、多くの若い世代が感じている社会からの「疎外」について、来場の皆さんと意見交換できればと思っています。

■講師プロフィール

1957年生まれの元自治体職員。大阪市立大学法学部で、ファシズム論の権威・山口定氏の下で政治学を学んだ後、30数年間地方自治体職員として勤務するとともに、佛教大学や大阪府立看護大学などの非常勤講師を歴任。現在は、いくつかのまちづくり研究会や社会科学系研究会、読書会で自己研鑽を続けるかたわら、地域防災リーダーとして地元町会やマンション管理組合で防災活動に携わっています。

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