【若葉マークの車いす生活:41】自宅にいるつもりで過ごして下さい?(2022年7月)
老人ホームの生活は、集団生活だ。そんなこと言われなくとも分かっている、と言われるだろうが、高齢者には、なかなか難しいと思える時がある。
6月末以来、急激に暑くなった。当然、食堂では冷房が入る。
理想的な室温のコントロールというのは、最新の豪華ビルなら兎も角、庶民の世界では縁遠い。現役時代から、冷房が効きすぎたり、弱すぎたり、場所によって温度差が激しかったり、風がまともに当たったり、という経験が山のようにある。自分の体調に合わせて、重ね着するなど、自前の対策をするしかないと諦めている。
しかし、老人ホームというものは、自己防衛がそもそも無理な人間が多く入居する施設だ。温度変化に弱く、感じ方の個人差も大きいし、自分で臨機に衣服を着脱することが無理な人も多い。だから、空調についての不満は、直、周りや職員に訴えることになる。
ということは分かってはいるけど、でも・・・。
食堂では、熱中症対策のため、冷房をして、コロナ対策の換気のため窓を一部開けておく、という、当然なことが行われていた。
右側の席のAさんは「寒い、冷房を止めて欲しい」と言いだした。しかし、左側の席のBさんは「今日は、暑い」という。開いている窓についても、Aさんは「風が寒いから閉めてくれ」という。Cさんが「窓閉めたら、よけいに寒くなるよ」と言っても、「寒いから閉めてくれ」の一点張り。勿論、コロナ対策なんて、頭の片隅にもない。それぞれが、こちらに同意を求めてくる。こちらとて、暑い、寒い、換気、に一言いたいのだが、こうなると、ただただ黙っているしかない。職員も大変だね。
もう一つ。
テレビの音がたまらなくウルサイ。Dさんがボリュームを上げたらしい。以前、「耳が悪いのでテレビの音が聞こえない。」と言っていた。他方、Eさんは、「テレビの音がうるさいのは、体にこたえる」と。
黙っているしかないが、頭がガンガンする。職員にそっと手を挙げた。職員は、ニヤッとして音量をそこそこに落としてくれた。こちらが訴える前に何とかして欲しかったなあ。しかし、職員は配膳の準備で大忙しなのだ。
入居ガイダンスの時、聞いた言葉。「自宅にいるつもりで過ごしてもらえたら、と、思っています。」自宅では、空調、音量は、自分の勝手なのだが。
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