【若葉マークの車いす生活:8】浜の真砂は尽きるとも(2018年7月)

※高齢化、怪我・病で余儀なくされる車いす生活。その不安を抱えながら過ごす友人H氏による、古希を迎えて味わう貴重な車いす初体験談。


浜の真砂は尽きるとも

 電動車いすのバッテリーが盗まれることがあるので、外出時に長時間離れる時は、盗難防止に気をつけるようにと業者の方から教えられた。
 手動車いすに電動ユニットを取り付けた簡易型切替式の車種は、折り畳みできるのが利便性の一つ。バッテリーは背後にむき出しで取り付けてあり、充電のため取り外しができる。
 なるほど、盗もうと思えば簡単だ。5~6万円もするものだし、外出先で被害にあって立ち往生するのはかなわない。バッテリーと車体を結ぶため、100均ショップで番号鍵付きワイヤを買った。この程度で十分だろうと。ところがこのワイヤ、番号鍵が回らない。自転車屋で買い直しの羽目に。1,200円。正に安物買いの銭失い。
福祉機器を盗むなど盗人の風上にも置けない、と不良品問題を重ねて腹が立った。
「でもね、世の中。ブラック企業てのは、労働力泥棒だよね。タダ同然の国有財産の払い下げや、莫大な政府助成の不正受給事件てのは、税金泥棒じゃないのかい。コソ泥なんざぁ、小せえ小せえ。」ふとそんな言葉が聞こえてきたような気がした。
 清く、正しく、美しく、誠実に、というのは死語の世界か。
 世に盗人の種は尽きまじ。

(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.218に掲載)


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