【まちなかの散歩:117】木の心、石の声、民の心を聴く(2018年5月)
ゴールデンウイークも過ぎ、多くのシルバーエイジの期待を集めた豊中駅前まちづくり会社の春の行事「丹後ツアー」もバスの車窓からの山野の新緑、船上からの海の青さを堪能して終えられた。
この旅の企画を練っている最中、案じられた北朝鮮の脅威も、オリンピックを契機として南北朝鮮、続いて、中朝のトップ会談が行われ、5月までに開催されるという北朝鮮党委員長と米大統領の劇的な会談の成果に期待が高まっている。頭を抱えたところで落ちてくるミサイルへの対処法にはならず、体育館に避難しても避け難い事なのだと冷静になれ、ひとまずは、退職後の細やかな旅をし、読書するという日常を送れている。
縁あって法隆寺を訪ねた際、紹介されて読んだ本に法隆寺・薬師寺の宮大工であった西岡常一氏の著書『木に学べ』がある。大統領ならぬ「棟梁」とは、「木のクセを見抜いて、それを適材適所に使う」ことだと言い、「木を組むには人の心を組め」という。「堂塔の木組みは、寸法で組まずに、木の癖で組め」「住む人の心を離れ住居なし」とも言い残している。さらに、お寺参りと並んで、旅の定番に城めぐりがある。あの高い石垣の多くに採用されている自然石をそのまま積み上げる「野面積み(のづらづみ)」は、一見粗野に見えるが強度には比類なきものとされている。その石工術を手掛ける琵琶湖湖畔坂本の石工集団・穴太衆(あのうしゅう)には、「石の声を聴き、石の行きたいところに石を置け」という教えが脈々と伝えられているという。
5月15日から豊中市の新しい市長が市の行政をリードしてくれる。推薦された議員・政党の顔色を窺うだけに終始することなく、その議員を選んでいる市民の声を反映した政策を組み立てて実現してもらいたい。優秀な専門職集団である行政職員の専門性と志を活かした人事配置を行い、市民に接して得たニーズを聴き取り、政策化して貰いたいものである。新しいリーダーに期待する。
(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.216に掲載)
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