【まちなかの散歩:21】ダッチロール(2010年5月)

 桜が散って、早や1か月。華々しく宣言した民主党のマニュフェストへの期待も次々と散っていく中での連休・ゴールデンウイークである。
 欧米に学んだ都市整備の理念として高く掲げた高速道路無料化の実現は、“なお道遠し”の感が強い。4月9日に発表された高速道路の新料金制度も平日料金の引き下げでは利用者・観光地のほとんどから歓迎の声が上がらず、高速道路と競合する鉄道・フェリー業界からも、平日の料金引き下げでの影響を懸念しているとか。
 休み中に、さんざん味わった延々と続いた渋滞では、まるで身柄「拘束道路」となり、時間的なロスの大きさは確かに大きく、世界中を注目させたCO2削減25%の環境政策宣言に逆行する大気汚染の発生と相まって課題は大きい。ここは政府の失敗でなく、国家としては、期待(気体)に応(固体)える液体(益体)であって欲しいものである。

 さて、大阪万博が1970年に開催されて40年。その成果は幾つもあるが、この機を逃さず整備された新幹線開通が国家的には大きな成果であった。終戦後、満鉄・中国大陸からの引揚者を多く労働者として雇用・吸収し、この時は社会的資本の整備に大きく貢献したのである。その際、大阪中央環状線を初めとする幹線道路網の整備と共に「伊丹」空港(大阪「国際」空港、ビルの所在地:大阪府豊中市蛍池西町3丁目555番地)の滑走路が延長され、大きく伸びると予測された旅客需要に応えようとした。しかし、今日、高速道路政策と同様に“迷走”しているのが空港問題である。このような事態を、万博開催を前に土地所有者と日夜を問わず先頭に立ち、膝詰めで買収交渉に当たったという故竹内義治豊中市長や地権者は天国でどう見ているだろうか。
 4月13日付けの産経新聞記事(通常「関空」「伊丹」と呼ぶ空港をわざわざ、関西「国際」空港とし、大阪「国際」とは標記されていないが…)によると、関経連の試算が、リニア中央新幹線の整備後、経済情勢が低調ならピーク時の約半分程度まで伊丹の需要が落ち込み、兵庫県の「需要が増大するという需要予測」に反しているという。
 ここで、素朴な疑問がある。まず、膨大な工事費を要するリニア(伊丹=関空間も同様)の運賃と航空運賃と比較してどうなるのか?次に、成長戦略会議で提案される「伊丹空港民間売却」案。で、国民生活として必要な社会資本の整備は、どこが行なうべきなのか?国際競争力に勝つためのハブ空港化なら、そのために生じた関空の莫大な負債は、本来は建設すべき国家ではないのか?伊丹廃港が政権の主張とも時代の流れにも逆行することになる国土交通省役人の派遣先・天下り先の人数で決定されるはずもないが・・・。
 “迷走”する交通政策に単に右往左往せず、地域を考える“地に着いた”議論と発言が必要ではないだろうか?

(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.34に掲載)


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