【若葉マークの車いす生活:29】まちのマスク景色(2020年5月)

※高齢化、怪我・病で余儀なくされる車いす生活。その不安を抱えながら過ごす友人H氏による、古希を迎えて味わう貴重な車いす初体験談。


まちのマスク景色

 コロナウィルスで緊急事態宣言が出る直前、電動車いすで約半時間の病院に行く。このご時世、気が進まないが、月一回大学から専門医が来る特別外来の予約日なので仕方がない。
 途中、開店前の薬局の前で、40~50人の行列ができていた。その行列、人と人の間隔が全くない。触れ合わんばかりだ。マスク入荷の情報でもあったのだろうか?社会的距離を空けたら割り込まれるのだろうか?(翌日、その薬局の前に、「マスクの入荷はありません」と大きな張り紙がしてあったと近所の人から聞いた。)
 病院に着き、呼ばれて内待合に。狭い廊下に40人余りが向き合って座っている。皆マスクをして黙っているが、我が身の近くに、3人マスクを着けていない人がいて、その人たちはぺちゃくちゃと終始喋っている。元気だなあ。約1時間半その状態が続く。
 その挙句の診察では、「症状は収まってきたが、後遺症が残るのは諦めろ」。やれやれ!
 感染症の危機管理とこの国の社会の在り方は、これから真剣に議論されなければならない課題だ。だが、今の我が身は、密集、密接、密閉、診察結果の憂さ晴らしに、帰り道、人通りの少ない商店街で刺身を大量に買う位しかない。

(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.240に掲載)


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