【まちなかの散歩:13】帰省閑話(2009年9月)

 歴史的な長さとなった梅雨がようやく明けての夏休み。候補者の名前を連呼する喧騒の選挙戦の最中、猛暑を一杯に受けた盆の帰省で久方ぶりに訛なつかしい故郷に戻り、宇宙からの生還ならぬ“草いきれ”の中で“家・まちの歴史”を感じながら数日を過ごした人も多かったことでしょう。心身ともに本当にお疲れ様でした。減り続ける財布の中身を考えると、昨年まで気になっていた高速道路の料金も、得票を優先し、環境問題を後回しにして、どこまで乗っても1000円なる人気取り”etc”カード政策によって大きく軽減され、心も軽くアクセルが踏めたはずが、その分、殺到する車で渋滞し、他に逃げ道もない身柄”拘束”道路では洒落にもならない。
 昨年夏、航空業界が新幹線・高速道路の激しい攻勢に押された結果、確かに、定員以上を乗せない飛行機という交通機関の特徴を表に出し、「帰省緩和」なる上手いキャッチコピーを打ち出し、「座布団1枚!」と唸ったものである。
 政策の争点が明らかにされない選挙と言われてきたが、環境対策が経済発展を妨げると言明する財界リーダーの感覚は、すでにハイブリッドに止まらず、電気自動車や自然エネルギーを歓迎する我が国民の意識とはかけ離れ、残念ながら今春一足早く選挙があって政策転換をした海の遠く向こうの“先進国”の政治感覚とはほど遠い。国民の感覚は、政策の整合性が欠如しているなどと理詰めでなくても日頃の生活感覚をもって“勘は及第”として結論を出していくのではないだろうか。
 効率性を重んじ、驚くほどの速度・規模で進められた平成の合併で名前を無くしてしまった町名・地名、新道が出来て閑道となった旧街道沿いの古い店舗跡に色褪せた看板に残る屋号の由来、店主との言葉のやりとりの思い出話に時間を忘れるのも、神社への高い石段の踊り場で涼しい風、見事な景色を感じる心境にも似て、また格別なものではなかったか。“菜(肴)・酒・情けの旅心”をしっかり味わって、“さぁ、後半のコーナー、頑張っていこう!”
 これで、今号も“閑話及第”としてもらえただろうか?

(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.19に掲載)


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