【まちなかの散歩:3】耳鼻咽喉科・歯科-噺家(はなしか)の話しか?(2008年11月)

 10年以上も前のことになるが、豊中に住み(阪大大学院研究員を兼ねる)、豊中のまちづくりを研究し、帰国後に全国各地での講演・論文を通じて「豊中のまちづくり」を紹介している韓国の文化人類学者・金賛鎬(きむ・ちゃん・ほー)先生が2年ぶりに来日した。彼の堪能な日本語の力がどこまでのものかは、天満・天神繁昌亭での笑福亭由瓶の独演会で明らかにされた。
 前売り2000円の笑福亭鶴瓶の弟子である由瓶(YOU-HEY!)の入門11年目となる独演会の「開口一番」が、桂三枝の弟子・桂三四郎によって演じられると、出だしから隣の席で大笑い。続いて由瓶の「おごろもち盗人」では、商人と間抜けな泥棒とのやりとり、現代では懐かしさのみが残る算盤を入れる仕草とロでの擬音を楽しみ、桂春蝶の子供で弟子の桂春菜の「お楽しみ」は、軽妙な海中動物の身振り手振りのゼスチャーで客席を魅了する。さらに、由瓶が熱演するおなじみの「ガマの油」に会場全体が笑いこける。
 中入り後は「音曲漫才」に続いて、トリは、由瓶が演じる「不動坊」で、長屋の不揃いな仲間達が登場し、しくじりながら悪戯をする話に聞き惚れて、あっという間の2時間余であった。
 金贊鎬先生も初めての異文化体験・落語鑑賞に長旅の疲れも忘れ、大満足のご様子。このたび、「豊中で楽しめる寄席」を目ざして、まちづくり会社が「アイボリー寄席」を11月20日(木)から開設する。すでにポスター・チラシを通じてPRをしているお陰で、順調なすべり出しである。(いや、笑いに“すべる”は禁語か?)第1回は、笑福亭由瓶、桂歌之助、桂佐ん吉に、生演奏のお囃子がつく。これまで、寄席など、「よせやい!」と敬遠してきた方にこそ、お薦めしたい。いわんや、寄席フアンには、豊中駅前で3ヶ月に1回程度の開催を企画されている落語会を育てて、足腰・財布の弱った時に備えて頂ければ幸いである。

(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.3に掲載)


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