【まちなかの散歩:131】これ、何よ!(2019年7月)

 あの長い連休明けからだったろうか。阪急宝塚線で今も乗降客数ナンバーワンを誇る豊中駅の人工広場に写真のような横断幕が張られている。所用があって他市から豊中駅のエイズ検査の啓発を目的としていることは十分にわかる。自分だけでない他人にも深刻な影響を与える人の健康に関わる重要な検査へのお誘いである。ただ、その検査の重要性を訴えるのではなく、ことエイズの検査を受けることが“タダ”であることを“うたい文句”にして勧誘し、「無料だから受ける、金を払ってはやらない」という考え方を助長してはいないかと、その知人も勘違いを指摘する。そう思うと、この横断幕の主張にはセンスの悪さへの不愉快さを越えて怒りが湧いてきた。医療・福祉が金銭感覚で語られる風潮に乗る行政の責任感覚にである。保健所ってそんな感覚の職員が務めていたのだろうか?誰もチェックをしなかったのだろうか?国のトップ並みの芸能人感覚での軽いノリで健康管理をしてくれているのだろうか。
 さて、そのかつては庄内・千里と並び豊中市の3大中心核として位置づけされた豊中地区にも着目し昨春の選挙で「豊中駅周辺再整備構想」を公約として掲げた新市長が誕生した。これは歴史を振り返れば、かつて各分野から集まった地域住民が結成した「豊中駅前まちづくり協議会」が長年にわたる活動の末に策定した『豊中駅前まちづくり構想』(1995年)を豊中市が「豊中駅前のまちづくり基本方針」(1997年5月)として位置づけしてから2019年の今年、20年余も放置した反省から、重点事項として訴え市民の期待に応えるため行政のトップに就かれたのである。
 豊中地区の住民、そして長年にわたり住みよい町への生活環境を訴えてきた古くからのまちづくり協議会メンバーは、やっと実現への一歩が始まったと小躍りして喜んだ。それを受けて歩み出したと思われた「豊中駅周辺再整備構想」についての説明会が過日の協議会総会の後、豊中市からあった。席上、『まちづくり構想』の「実施21件」として片づけた内容が実は「着手」(手を付けたが地元の協力が得られず進捗していないと釈明)という現実であったことが判明する。胡麻化しであると出席した友人が息巻いていた。まさに国に従って悪いことも真似るようである。
 協議会の人たちの着想・地道な活動に敬意を表するとともに、行政の欺瞞に目を見張らす議員の奮起を促したいし、福祉に強いと顕示するリーダーが部下の行動に目を見張らしてもらいたい。

(『豊中駅前まちづくりニュース』Vol.230に掲載)


※まちなかの散歩のバックナンバーはこちらをご覧ください。