【若葉マークの車いす生活:42】銀行?医者?(2022年7月)
ある昼食時の食堂で。
斜め後ろの席で、車いすの人が、「歯医者に行かないと」と、おぼつかない手つきで車いすを動かし始めた。調子が悪いのだろう。職員が、「さっき、歯医者さんに診てもらって、しばらく様子を見ましょう、って言われたでしょう。」と話すが、歯医者に行くと繰り返すばかり。危険があるので、職員は、つきっきりとなる。
こちとらは、“職員の手を取られると、配膳が遅れるんだがなァ”と、不謹慎極まりない食いしん坊に成り下がっている。
横の席の方から、「家の近くに、住友銀行、三和銀行、大和銀行があってな」、「ああ、あそこの交差点やな。」との会話が聞こえてくる。へえ、たまたまだろうけど、入居者同士が近くに住んでいた、ということなんだ。
“ん?ちょっと待てよ。その銀行の名前、何年前の話だ?えらく時代物じゃないか!”彼女たち、一体、何歳なんだ?ホームに入居してから、それ程経ってないと思えるのだが。と、失礼ながら、じろじろ眺めで女性の歳を詮索する。
Kさんがニコニコして、「あそこで、銀行の話をしてますけどね。ここに入ったら、銀行が何処に在るかじゃなく、医者が何処に在るか、なんですがね。」
御尤も!恐れ居りました!ここでの会話の楽しみ方なんですね。一つ賢くなりました。
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